化粧品開発者の仕事内容
私たちが普段ドラッグストアやデパートで手に取る化粧水やリップスティック。
これらが生み出される最前線にいるのが、化粧品の研究開発職(処方開発者)です。
華やかなイメージを持たれがちですが、その仕事内容は非常に緻密で、科学的な根拠に基づいた地道な作業の連続です。
開発のプロセスは、まずマーケティング部門と連携し、「どんな肌悩みを解決する商品か」「ターゲット層に受けるテクスチャーは何か」というコンセプトを決定することから始まります。
その企画に基づき、数千種類もの原料の中から最適な成分を選定し、水分や油分、界面活性剤の配合バランスを決める処方開発がメインの業務となります。
ほんの数パーセント、時には0.1パーセントの配合の違いで肌への浸透感や香りが劇的に変わるため、納得のいく試作品ができるまで何百回と試行錯誤を繰り返すことも珍しくありません。
さらに、作った試作品が長期間保存しても分離や変色をしないかを確認する安定性試験や、皮膚への刺激がないかを調べる安全性試験も避けては通れない重要な工程です。
また、研究室のビーカーレベルで作れたものを、工場の巨大なタンクでも同じ品質で作れるように調整するスケールアップの業務や、薬機法(旧薬事法)などの法律に基づいた申請書類の作成なども行います。
一つの商品が世に出るまでには、早くて半年、長いものでは数年単位の時間がかかりますが、自分の作った商品が店頭に並び、誰かの肌を美しくする手助けができるという、大きな責任とやりがいを感じられる仕事です。
化粧品開発者に向いている人
化粧品開発に向いている人の第一条件は、やはり化粧品や美容への尽きない関心です。
世の中のトレンドに敏感で、新しい成分やテクスチャーを追求することに喜びを感じられる人は、この仕事に大きな適性があります。
しかし、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが粘り強さと論理的思考力です。
開発の現場は、実験の失敗の連続です。
「なぜ分離してしまったのか」「思った通りの感触にならないのはなぜか」という原因を化学的な視点で冷静に分析し、仮説を立てて次の実験に活かすというサイクルを回し続けられる忍耐力が求められます。
また、化粧品は数値データだけでなく、使用感や香り、色味といった数値化しにくい官能(感覚)が品質を左右する特殊な製品です。
そのため、とろっとしているけれどベタつかないといった微妙なニュアンスを感じ取れる繊細な感性を持っていることも強みになります。
さらに、開発は一人で完結するものではありません。
企画担当者の抽象的なイメージを具体的な成分に翻訳したり、工場の製造スタッフに手順を正確に伝えたりするための、高いコミュニケーション能力も欠かせない資質といえるでしょう。
理系的な頭脳と、芸術的なセンスのバランスが取れている人が、ヒット商品を生み出す開発者として活躍しています。
化粧品開発者になるには?
化粧品開発は化学的な専門知識を必要とする職種であるため、理系大学や大学院出身者が採用の大半を占めています。
具体的には、化学、薬学、生物学(バイオ)、農学などの学部で、有機化学や界面化学、皮膚科学などの基礎知識を身につけておくことが一般的なルートです。
特に大手化粧品メーカーの研究開発職は人気が非常に高く、即戦力に近い知識や研究遂行能力が求められるため、大学院で修士号を取得していることが応募の条件や有利な要素になるケースが多く見られます。
就職先としては、資生堂や花王、コーセーといった自社ブランドを持つ化粧品メーカーと、他社から依頼を受けて製造を行うOEM/ODMメーカーの大きく二つがあります。
自社メーカーでは一つのブランドを深く掘り下げることができますが、OEMメーカーでは多種多様なクライアントの製品に関われるため、若手のうちから数多くの処方開発を経験し、幅広い技術を習得できるというメリットがあります。
必須の国家資格はありませんが、学生のうちに日本化粧品検定やコスメマイスターなどの民間資格を取得しておくと、意欲のアピールや基礎知識の証明として役立つでしょう。
なお、文系出身者の場合は、白衣を着て実験をする研究職に就くことは難しいですが、商品企画やマーケティング職として、コンセプト立案の側面から開発に携わる道が開かれています。
美を科学の力で創り出すこの仕事は、専門的な学びの積み重ねの先にある、夢のあるキャリアパスです。
